桃缶は白桃に限る

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桃缶は白桃に限る

「ねぇどうしよう。紗季ぃ」 帰り支度を始める紗季にすがりついていた。 「なんでまた、そんな嘘をついたの?」 ため息をつきながら、かわいそうな私の両手を握り椅子に座り直してくれた紗季。 「仕方なかったんだもん。追い詰められて、スカートの中身も見られるし」 「スカートの中身?」 「それもそうなんだけど……あ〜どうしよう。なんで寄りにも寄って見栄はっちゃったんだろ。神島さんだなんて」 課長にデートの相手を聞かれて、本当はそんな奴いないくせに!みたいな顔をされたから、つい勢いで言ってしまった大きな嘘。 『神島課長ですよ。デートの相手』 そう、ホラをふいた。ホラ貝も真っ青になるくらいの嘘だ。 それを聞いた課長の眉毛がピクリと動いた。何故って、私が上げた名前が営業の神島 卓也課長だったからだ。 上野課長と神島課長は、課は違えど同期入社で何かとライバル視されて見られていた。 課長になったのも同じ時期だし、お互いにライバル視しあっている2人だ。 それにイケメン度数も2人は互角。 上野課長がソース顔のイケメンなら、神島課長は、しょうゆ顔のイケメンだ。 ただ、どちらも似ている点がある。女子社員人気が高く、来るもの拒まずのチャラい上司として名高いのだ。
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