最悪の事態

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最悪の事態

月曜日。 昼休みに同期の紗季とランチをしていた。 「だから、言ったのにぃ。マンションなんかを独身女が買ったらロクな事にならないよって」 紗季が、ほら見なさいよって感じで言う。 引っ越したマンションの下に課長が住んでいたことを紗季に話していた。 会社近くのカレー屋さん。インド人が経営している。だから、本格的なカレーだろうと思ったが、実は、このマスター日本生まれ、日本育ちのインド人である。 日本語しか話せないから、外国人に声かけられると本気でアタフタするようだ。 見かけ倒しのインド人マスターは、あまり知らないのにカレーの店を始めたようだ。 カレーは、好きなようで店を出す前にはいろいろと研究したようだ。 それで極めたのが、キーマカレー。 その一本メニューでやっている。 「……誤算よ。誤算!」 カレーライスをスプーンですくう紗季。 「今日のカレーは、甘いね」 「聞いてる? 下に上野課長が住んでいるっていうのが微妙に嫌よね?」 「マスター、お水下さい」 手を上げる紗季。 「だってさ、下に住んでるのに『うえの課長』なんだよ。すごくややこしいし、笑うよね?」 「あ〜、それ、すごい! 下に住んでるうえの課長! 面白いね」 感心する紗季。 「しかもさ、続きがあってさ……」
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