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甘い匂いがした。バニラアイスに似た、甘い香りが。
シャツの襟元からのぞく鎖骨が間近。
それこそ息がかかるほどの急接近に動揺していると、彼女は陽一に向かって両手を伸ばし、頭になにかを被らせる。
と、思うと、携帯を取り出す。
カシャっと、機械的な音が響いた。
「……よく、撮れてる。念のため、パソコンにも転送して」
「一体、なにを……」
なにを撮られた? 頭になにを被らされてる?
携帯をいじる紗白を不審げに見上げていると、紗白は携帯画面を陽一に見せた。
そこに写っていたのは……
「ちょ。急に暴れるなよ!!」
赤い女性下着をかぶらされた、自分の姿。
「……はなせっ!! あ、あんな写真」
陽一はハルトを振り払い、紗白に手を伸ばす。彼女の手首を握りしめ、しかし、そこまでだった。
「……痛いな、馬鹿力」
あまりにも細い手首に、陽一ははっとする。慌てて謝ろうとした彼が見たのは、とてもとても楽しげな微笑だった。
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