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最悪だ。
あんなことをされた以上に問題なのは、この人に惹かれているという事実。しかも、好きな人は自分をBLのモデルとして見ているというおまけつき。
泣きたい。
「……あ、ハルト。お茶は冷たいのじゃなくて、お抹茶がいい。頼める?」
「わかった~ 料理部から、お湯もらってくんね~」
ハルトが出て行って紗白と二人きりになり、陽一は内心狼狽えた。お菓子を選ぶふりで視線をあわせないでいると、柔らかな声がかかる。
「美味しそうなお菓子はあるかな?」
「……どれがいいですか?」
「好きなのを選んでいいよ。好き嫌いはないから」
陽一はすぐに甘いものにしようと思った。さっき紗白の顔を見たとき、ひどく疲れているように見えたのだ。
「……小説の調子はどうですか? その、スランプだと聞きましたが」
「…………なんで」
「あの……」
「いや、スランプなんてしょっちゅうだから、君が気にする必要はないよ? それより、お菓子を決めてしまおう」
返ってきたのは、冷やかな声音。どうやら地雷だったらしい。
内心首をすくめながらお菓子を漁っていると、ふと、赤いちりめんの巾着に目が止まった。
「あ。木戸くん、それ……」
落ち着いた声が嬉しげに跳ね上がるのを聞き取り、陽一は巾着を取る。
「これが、いいんですか?」
「……あ、うん」
なにが入っているのだろう。見た感じでは、金平糖とか、カリントウが入っていそうだが……
出てきたのは、予想外のものだった。
「っ……な、なんですかっ、これ!!」
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