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「え? カルタだよ見ての通り。探してたんだ」
紗白の言う通り、それはカルタだった。しかし、ただのカルタではなかった。
カルタの絵札はすべて青年で、服を着ていない絵が多かった。字札は見るに耐えない文言が踊っている。
たとえば
『俺たちが出会ったのは、まさに奇跡!運命!宿命! さあ、性別の壁を乗り越えようじゃないかっ!!』
『誤解だよ。俺はロリコンじゃなくて、ショタコンっ! っはあはあはあはあ、膝っ小僧、舐めまわしたい!』
『あーらっ、可愛い子猫ちゃんじゃなあぁぁい。ふるふる震えて、なんて可愛い。う・ふ・ふ、食わせろ?』
「……商品名はなんですか?」
「正式名称は、乙女のためのBL(攻)カルタ」
あー、てことはBL(受)カルタもあるんだぁ。すっげー
……馬鹿じゃないのか!! だれだよっ、思いついた奴!!
「カルタといっしょに声優さんのCDがついているのだけど、生で読むのが一番かな。ハルトに読ませるとうまいんだよ」
おかしい。
読ませた紗白はもちろん、読んだハルトも絶対におかしい。しかし、一番おかしいのはやはりこの綺麗な御仁だった。
きらきらと、陽一に期待のこもった目を向けてくる。
「……いやです」
無言で、じぃぃぃと見つめてくる。
「絶対に嫌です!!」
「一枚だけ。ね、好きなの選んでいいから」
「おかし選ぶみたいに言わないでくださいっ!」
「だめ、かなぁ? 録音しようと思ったのに」
「………………」
ひどい、ひどすぎる。なんで俺はこんな人のこと……
しかし、これだけひどければ百年の恋もさめると、陽一は思った。軽蔑できるはずだと。
甘い考えだった。
「仕方ない。じゃあ、ハルトに読ませよう」
その呟きを聞いた瞬間、陽一の中で対抗心が湧いてきた。
あいつに読ませるくらいなら……
そう! 男なら泣いて飲み込め!
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