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みな、何かに縛られる
初日のBLカルタは羞恥で死ねると思ったが、それから一週間は思いのほか平和な日々を送ることができた。
ハルトは基本半裸でごろごろしているだけだし、紗白はたいてい隣の部屋に籠っている。陽一が来ると三十分ほど休憩しながら、セクハラまがいの聞き取り調査をするために出てくるが、それだけだ。
陽一は昨日の紗白からの質問を思い出す。
昨日は『心を寄せる美青年の吸血鬼エヴァが、目の前で男達に辱められているのを目にしたら、彼を守る恋人のイアンとして、どう思うか?』だった。なぜ好きな人にそんなことを話さなければならないのだろうと一瞬悲しくなったが、最近はその状況に慣れつつあった。
……それよりも先輩の顔色が日に日に悪くなっている気が。ちゃんと寝ているんだろうか。
陽一は吐息をつきながら、特別教室の扉を開く。
「こんにち……あれ?」
「……え、あんた」
靴脱ぎ場には見慣れぬ女生徒がいた。少女はどこか暗い表情だったが、陽一と目が合うなり、眦を釣り上げる。
「っ……なんで、こんな平凡なのを紗白さまはっ」
「え……」
「あの方がスランプなんて! 書けなくなったことなんて、一度もなかったのにっ。全部、全部、あんたのせいなんだからっ!!」
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