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噛みつかんばかりの勢いで怒鳴ると、陽一を突き飛ばして出ていった。
……スランプ? 俺のせいって……
止める間もなく一人残された陽一は、眉をひそめた。
紗白先輩がスランプなのは聞いている。先輩は、いつものことみたいに言っていたけれど……本当はそうじゃない?
ふいに、もやもやが胸に広がった。それはモデルを頼まれたときに我知らず生まれ、ここに通うにつれ育っていく疑問。
なぜ紗白琴羽は、木戸陽一をモデルに指名した?
「木戸くん、そこにいるの?」
突然、襖ごしに呼ばれ、陽一はドキッとする。紗白の声だった。
「ねえ? もしいたら、来てくれないかな? 少し困ったことになってしまって。本当に、どうしてこんなことになったんだろう……君の力を、貸してほしいんだ」
「っ……今、行きます!」
紗白の深刻な声音に、疑問を放り捨てて和室に駆け込む。すると、そこには……
今日も半裸の美少年が、亀甲縛りにされて転がっていた。
「……むー、むー……」
なんだ、これ。
猿ぐつわを噛まされたハルトの表情は、苦渋で歪んでいる。滑らかな肌を走る深紅の紐が眩しくて、陽一は目を閉じた。
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