みな、何かに縛られる

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「…………なにを、やっているんですか?」 「あ、木戸くん。早速だけど、これほどくの手伝ってくれないかな?」 「あ、木戸くんじゃありませんっ。なにをやってるんですかっ!!」  亀甲縛りなんて誰がやった。いや、誰って一人しかいない。 「先に言っておくけれど、ハルトの了承を得て縛ったからね? 私とハルトの力の差では、薬でも盛らない限り無理だから」 「薬を盛ったんですか! それはさすがに最低です!!」 「……だから、盛ってないってば~」  紗白はハルトの猿ぐつわを外す。可哀想な被害者の第一声は 「はあはあ……美人に縛られるってイイネ。ついでに踏んでくださ……もごぉぉ」  陽一は無表情で猿ぐつわを噛ませ、紗白を睨む。 「なに変態を喜ばせてるんですっ。なんですかっ、ご褒美ですかっ。腐ってます!」 「違うってば~ ハルトが席を外したくないってゴネるからね。仕方なく! 仕方なく、だよ? ふふ、いい格好だね」  微笑みながら緋色の紐を爪で弾く彼女に、紐をほどく気はあるのだろうか。 「……俺がやります。貸してください!」  陽一はハルトの背中側にある結び目を鷲掴んで、その体を転がす。勢い余って、ハルトは机に頭をぶつけて呻いたが無視した。変態に人権などはない。 「うわ、結び目、固い……この紐、切りますよ?」 「駄目! それは借り物なんだよ」 「はあ……」  ちなみに机の上には見慣れぬ本があった。  タイトルは『初心者のための安全な縛り術』これは借り物なのか、私物なのか。
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