みな、何かに縛られる

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 ……いや、考えるのはよそう。  陽一は紐をほどくことに集中することにする。すると、妙に強い視線を隣から感じた。 「なぜ、そんなに見るんですか?」 「小説の後半で、イアンが、捕らえられたエヴァの縄をほどくシーンがあるのを思い出して」 「つまり、小説を書く参考に見ていると」  しかし、小説の舞台は中世ヨーロッパだ。亀甲縛りをほどくところが、なんの参考になるのだろう。 「こんな編み目メロンみたいな縛り方じゃなくて、もっと普通の縛り方にすればよかったな……でも、そこは想像力でなんとか」  真剣な顔でつぶやく紗白に、陽一は深い深いため息をついた。 「先輩は……本当に小説を書くのに熱心ですね」 「そう、かな?」 「そうですよ。しかも、どうしてBLなんですか? なぜ、好きなんですか?」  ついつい早口になって問いかけると、紗白は不思議そうに首を傾げた。 「なぜ、と言われても困る。君が女の子を好きになるのと同じくらい、私には当たり前のことだから」 「変な例えをしないでくださいっ」 「まあ、具体的に好きなところはあげられるけれど。たとえば、男同士だからできるシチュエーションとか、攻め受けの要素の豊富さとか、女性ではありえない……」 「っ。い、いいです、わかりましたからっ! ……そ、そういえば、どうして、ハルトを追い出す必要があったんですか?」  それは話を変えたくて出た問いかけだった。しかし、紗白は一瞬、目をすがめる。 「うん? ……それはさっきまで、知人が原稿の進行具合を見に来ててね。その子とハルトが顔をあわせると必ず喧嘩になるから、それを避けたかったんだよ」  陽一は紐をほどく手を止める。
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