みな、何かに縛られる

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「締め切りまで……あと一週間でしたよね」 「ちょうど中間テストの最終日だね。君はちゃんと勉強してるかな? わからないところがあったら、見てあげるよ?」 「俺のことよりっ、原稿はいいんですか?」  紗白は穏やかに微笑んだ。 「ちゃんとやってるから大丈夫。君は心配しなくていい」  いつもと同じ余裕のある様子で。  そのことが逆に不自然だと、陽一は感じた。  ……そういえば、さっきの入り口でのやりとりって、ここから聞こえるよな。でも、紗白先輩は何も言わない。それは……触れられたくないから?  だが、聞きたいと思った。何を考えているか知りたいと思った。  それを察したか、紗白は腰を上げる。 「でも、あまりのんびりはしていられないね。ここは木戸くんに任せてそろそろ書かないと」  紗白は隣の和室の襖を開ける。陽一はその背中を追いかけた。 「あのっ、お話があります!」  陽一が隣の和室に足を踏み入れるのは、はじめてだった。  小さな文机と、難しそうな書物が並んだ本棚。それだけしかない寂しい部屋の片隅で、白猫が伸びをしている。 「なに、かな?」  紗白は文机の前に座り、首を傾げた。ゆったりとした仕草だが、涼やかな瞳に警戒の色があるのを陽一は見逃さなかった。
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