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『突然、押し掛けてごめんなさい。気を悪くしてる、よね?』
『いや……別に』
『実はね。文芸部は部員不足で、こんな時期なのだけど、部活に入っていない人に声をかけているんだ』
『はあ』
『今日の放課後、暇かな? ぜひ、文芸部の見学にきてほしいんだけど』
『あのさっ……そもそも、なんで俺っ? 帰宅部の奴なんて他にいくらだって』
その答えは聞き損ねた。クラスの女子が騒ぎだしたせいで。
『うそっ、紗白さまのお召し上げだわ!! な、なんでこんな奴にぃぃ!』
そんな意味不明の台詞が響いたと思うと、あちこちで黄色い悲鳴があがった。
そして、気づけば。
彼はクラスの女子に囲まれ、文芸部への見学を承諾させられていた。そのときの女子の顔は、とても怖かった。見学を断ったら、明日からハブられていたんじゃないかと思うほどに。
……紗白琴羽って、何者?
それほど女子に強い影響力を見せた人は、先ほどから穏やかに話している。
「文芸部といっても、そんなに堅苦しいイメージをもたなくていいからね? そもそも私が去年立ち上げたばかりで、部員は四人しかいないんだ」
部室への道すがら話されるのは、活動日や活動内容、文化祭での催し、その他もろもろ。
ただ彼が知りたいのはそんなことではなく……
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