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優奈は私の言葉に一瞬黙り込むと、ふふっと笑った。
「……何それー。湯気が出るのはえみちゃんちのお風呂だっておんなじだよ。ママってなんか、ロマンティック」
その言葉に苦笑する。
今時の子供は、大人だなあ。そんな風に思う。
遠いあの日。
もう二十年以上前だろうか。お母さんがなかなか私を『一人お風呂デビュー』させなかったのは、この風呂釜の扱いが少し難しかったからなのだろう。
注意しないと一酸化炭素中毒を起こす可能性のある、古い古い風呂釜。だから私は結構な年齢までお母さんと二人でこのお風呂に入っていた。お風呂を沸かすのも追い焚きも、お母さんの役目だった。
大人になってから気付く。お母さんが長い間私と一緒にお風呂に入っていたのは、お母さんの心配と優しさだったのだと。
だけれど、子供の私はそんなこと知らなくて。
共働きで忙しくて、いつもゆっくり話す時間も無かったお母さん。
だから唯一ゆっくりお喋りができる、このお風呂の時間が大好きだった。周りの友達が一人でお風呂に入るようになっても、私はなんだかんだ言い訳をしながらお母さんとお風呂に入った。お母さんと一緒に入るお風呂の時間がすごく好きだったことを思い出す。
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