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「岐司さん、前の世界ではお金がすべてでしたよ。
皆がそれを多く得る為に競争しますし親もそれを望みます。金持ちになれば尊敬されるし人を雇うこともできます。それがいけないことなのでしょうか?」
「いえ、なにも財を得るのが悪いことではありません。
財を成す本当に徳のある方も少なからず存在します。
そういう方は家族を大事になさいますし派手な生活もされません。そして誰にでも優しいものです。
問題はそれが真っ当な仕事の報酬であるかどうかということと執着し過ぎないことです。
たとえば目先の利益ばかりを重視して従業員や家族を蔑(ないがし)ろにする経営者は一時的に成功しても長続きはしません。
いずれ必ず没落するか、大きな病気など災害に見舞われます。
私が言いたいのは感謝の心なく利益を独占し、自分の良心をねじ曲げて得たものは簡単に離れていくということです。」
研次は脳裏にじわりとした重圧を感じた。生前の生き様を岐司はどれくらい把握しているのかは分からないが、前述の話が自分に近いものを含んでいたからである。
それならば罪状がどれ程のものかを測り、自分の置かれた現状を知らなければならない。
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