キミの温もりを背中で

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カラオケのバイトが終わり。 外に出れば、もう空は白くって。 吐き息さえも白い。 「さっみぃー」 両手を口に当て、はぁーっと息を掛ける。 そのくらいでは全然温まらなくって。 昨日部屋を出るときは、この時期にしては温かかったから手袋もマフラーも置いてきた。 「失敗したな…」 後悔しても遅い。 あっ、そうだ! くるりと身体の向きを変え、目の前にある自販機に小銭を落とし、コーヒーのボタンを押す。 ガタンと少し大きな音を立てて落ちてきた少し熱めの缶を取り出した。 「あったけぇ」 両手で暖を取るように包み込んだ。 「いいなぁーオレにも頂戴」 後ろから、涼介が声を掛けてきた。 涼介は同じ高校で同級生。学年でもトップクラスの頭の良さを持ち、容姿だってかなりのイケメン。ただ、運動神経はちょっと残念なとこもあるけど、そのくらい抜けてる方が女の子にはいいらしい。 全部完璧なやつなんていないしね。 俺だって、それなりにモテる。 …けどね 「今、買ったばっかなんですけど?」 「知ってる。見てたもん」 涼介は笑って、俺の手を包む。 「つめてぇ」 「だから、言ったでしょ。今買ったばっかりだって」 俺はふふふと笑ってその手を離し涼介に缶を持たせて、今度は俺が涼介の手を包んだ。 「あったかい?」 「ん」 涼介は、幸せそうに微笑んだ。 その笑顔、可愛い そう思った。
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