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長女、葉月の塾通いを今後考えるならば月三万。次女、若菜の修学旅行資金も蓄えなくちゃ。三男の颯の入学式のお洋服、やっぱりレンタルにして良かった。
パソコン画面に映し出された先月分の家計簿と通帳残高をつき合わせるうちに、万里子の唇はうんうんと唸りタコのよう伸びていく。赤は万里子の好きな色ではあるが、家計簿までその色に染まらなくてもよろしい、と思っても家計簿数字は主の嗜好に寄ろうとするのか見事に朱に染まる。
ああ、四月も赤字決算──黒字に転じるのはいつになることやらと、万里子は天井を仰ぎ見た。
吹き抜けの高い天井はこの家を建てたときにこだわったもので、二階の子ども部屋からの声はよく響いてこちら側にも届く。「颯、じっとしててー」「おねーちゃん、これってこうでいいの?」「ああそう、バッチリ」なんて会話が聞こえるが、一体何をしているのやらと子育て中にはよくある疑問を浮かべた。
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