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 目を丸めた万里子を満足そうに見上げたのは真ん中の若菜で、勝気な瞳をたわんで見せた。 「お母さん前、温泉行きたーい!  ってお父さんに言ってたよね」 「き、聞いてたの」  良明の前だと出会った頃の大学時代と変わらない口調になってしまう万里子。そんな駄々をこねた日もあったように思う。 「これはオレらからのプレゼントだ!」  えっへん、と腰に手を当てて胸をはる颯。なるほど、脱衣所の片隅には使われたであろうバケツと浴室洗剤とスポンジがまだ残っている。万里子が家計簿をつけている間に掃除し準備をしていてくれたらしい。  それを隠すようにまた葉月が少し移動し、照れ臭そうに笑った。 「本物の温泉には敵わないけどさ、かなりリラックスできる機能搭載だから! 入ってみてよ!」  家計簿とにらめっこしてないでさ、と耳元でこっそりつけ加えられて、長女もだいぶ人間観察が鋭くなってきたぞと万里子は冷や汗をかきそうになる。  それならば仕方がない。ひとっ風呂浴びてきますかと万里子は笑った。
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