5092人が本棚に入れています
本棚に追加
/534ページ
いいじゃん。もう手繋いで、見つめ合って、良い雰囲気だったじゃん。夏祭りでキスもしてたじゃん。なら大丈夫だろ。言えよ。早く。もだもだしないで言ってみろって。ぜってぇ向こうもお前のこと好きだって。そこまでしといて違ってたら逆にビビるわ、って思いながら俺はその瞬間を、ネギ煎餅と共に見守ってた。
「必死よ? 俺は、続き気になるじゃん」
「はいはい」
「はぁ、これでスッキリだわ」
「でも、こんなんわかりきってんじゃん。このあと、こいつが走って、追いかけて、あいつに告、」
「ぎゃあああああ! 言うな!」
必死だなって笑った俺に和臣が、録画が途切れた時の気持ちを熱弁してくれる。時間延長なんて聞いてないって。いや、言ってたし。先週、最終回は時間が十五分長いって言ってたし。
「おー、頑張れ」
和臣がテレビの中で、告白しようかどうしようかと悩む主人公を応援してやってた。俺はもうそのシーンを観てるから、テレビドラマの代わりに、和臣の横顔を見てる。
「ビビるよなぁ。うんうん。頑張れ」
そういうもん? 俺は、早く言っちまえって、もどかしかったけど。恋愛したことねぇから、こういうのわかんねぇ。この年でって、思われるかもだけど、恋愛っつうか、彼女も、まだできたことがねぇ。だから、キスもその先も――。
心臓がバクついた。
次の展開をわかってるから。この次にどんなシーンが来るのか知ってる。告って、やっぱり全然余裕でオーケーもらえて、そんで微笑み合って、この後、キスをする。
ほら、今から、ちょうど……そのキスシーン。
「……」
今、まだ、キスシーン。
「……」
やべぇ。これ、気まずい。
「……」
まだかよ。こんな長かったっけ? テレビ画面ガン見もできないし、かといって、和臣のほうは見れないし。もう、先に勉強再開しちまうか。俺、これもう見たからとか言って。
最初のコメントを投稿しよう!