5 笑うけど、笑わない。可愛いけど、可愛くない

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「白い息吐いてみたり、満員のバスで流されるし、顔真っ赤だし」  肺のとこがくすぐったくて、落ち着かないし、それに。 「変なところで不器用だし」  それに、髪をこんなふうにボサボサにされるのも、笑われるのも、たぶん、他の誰にされてもムカついてた。腹が立ってた。けど、俺は腹を立てるどころか、ただ慌てるばっかで。顔面はずっと熱いまんまだし。 「普通に、可愛いだろ」 「バ、バカじゃねぇの」  反論できてこの程度、理由は、簡単だ。 「ほら、迷子になるなよ」 「なるかよっ!」 「や、なりそうだから言ってんだわ」  和臣は笑わないから。今、「っぷ」って笑ったけど、でも、笑わないから。手芸してるヤンキーで、器用なはずなのに不器用な俺をそのまま笑ってくれるから、からかうけど、からかわないでくれるから。日本語変だけどさ。それが嬉しかったんだ。
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