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神社の周辺は今が稼ぎ時とばかりに露店が並んでいて、祭みたいだった。あっちこっちから活気のある声と、食いもんの匂いがして、夜の十一時もすぎた頃の腹にはきつい。
かなりでかい神社だから、参拝に来るのも地元民だけとは限らなくて、仮設のバス停脇にある駐車場に停められていた車のナンバープレートにある地名も色々だった。
そんなだから初詣っていってたら、大概のやつがここへ来る。でかい神社のほうがでかくて強そうな神様がいそうだろ?
「あ、すげ、今、ステーキみたいな良い匂いがした」
今年は、ダチでも、もちろん、親でもなく、ふたつ年上の和臣と来てる。
「あー、腹減った。剣斗は?」
それが不思議で、ぎこちなくて、腹減ってるけど、落ち着かないから首を横に振った。
「あ、いや、別に」
「そ?」
「そしたら、先に参拝すませるか。っていうか、人がすごいから、はぐれないようにって、ほら!」
ぎゅうぎゅう詰めだったバスでのぼせたのもあったのかもしれない、どこかふわふわしてた俺は数人のグループに押し流されて、参拝の順番待ちの列からはじき出されそうになった。
「言わんこっちゃない」
「わ、わりっ」
びっくりした。一瞬で、それこそどっかに弾き飛ばされそうだった。でも、和臣の手がそれを引き止めてくれた。
「……ったく」
手を掴んで、そのまま。
「お前、危なっかしいな」
「……」
これ、手、繋いだままだけど? なぁ。
「ほら、ここ、心臓破りの階段。いくつあるんだっけか」
目の前には上まで見上げるとげっそりするような階段があって、その脇を灯篭の形を街灯がほんのりと明るく照らしてた。
「よし! 少しでも早く参拝終わらせて、ステーキ食いに行こうか!」
「はぁ? ちょ、おいっ! おいって!」
心臓がマジで破れる。なんでかいきなり元気なガキみたいに階段を駆け上った和臣と手を繋いでたままだった俺は、一緒になって階段を駆け上って、何段あるのか数えるのも面倒なほどあるのをジャンプして、走っていく。チラッと背後を見れば、ちょっと驚くような高さ。太腿はパンパンに張って、やばい。しんどい。でも、繋いだ手は離れないようにしっかり握って、和臣が駆ける度に揺れるブラウン色の髪を見上げる。
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