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途中、何度か、和臣が手をぎゅっと強く引っ張ってくれた。ゼーハーゼーハーって、呼吸困難寸前で、階段上るのきっついけど、俺はその手を離さないようにぎゅっと握り返したんだ。
あと数段のとこ。もうここまでのぼるとさ、最初の勢いの半分もなくて、隣で着々と上っていくおじさんとペースはほぼ一緒なんだけど。
「あ、と、少しっ」
そう、あと少しだから。
振り返った和臣と目が合った。そして――。
「とっ……ちゃっ……く!」
やば……マジで。
はぁ、って、大きな溜め息を和臣が吐いて、呼吸のリセットをした。俺も同じように胸いっぱいに冷たいだろう空気を入れるけど、今は暑くて、ダウンもいらないくらいだから、冷たくもないし、寒くもない。その代わりに、暑さと、あと、心臓がさ。
「っぷ、お前、顔、真っ赤」
「!」
心臓が、なんだっけ? 心臓破りの階段だっけ? だから、ほら。
だから、和臣が笑った今、ほら、心臓が、破れそうなくらい暴れてる。
「さて、一気に登って頑張ったし、合格祈願しとくか」
「……」
「受かりますように」
まだ、心臓が破けそう。
「ちゃんと、こいつが俺の後輩になりますようにって」
ドクドク、バクバクって、すげぇ胸の内側で暴れて、呼吸するのすら忘れそうなほどだった。
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