7 こってりこっくり優しい甘酒

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「すみません。夜分に。明けましておめでとうございます」  そんな大人の挨拶を聞きながら、俯いて、足元を見つめていた。親父たちが俺の様子を聞いて、それに丁寧に答える和臣の言葉だけを必死に耳が追いかける。真面目に頑張ってますよって褒められて、くすぐったくて笑いそうになるから俯いたまま顔は上げなかった。ただ声だけ聞いていた。 「俺は、三が日終わったら、向こうに帰るので」  和臣の声だけを追いかけてたから。 「今日は休みにして、あと残り二日、しっかり教えます」  笑顔でそれを言ってるのかわからなかったけど、でも、俺は、それを聞きながら驚いていた。和臣に教われるのがあと二日って聞いて、寂しいと感じる自分に、驚いていた。
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