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あと少しで今日の授業が終わっちまう。
「ふわぁ……」
そしたら、もうラストの一回しかない。
「教える側が大あくびしてんじゃねぇよ」
「あはは。剣斗って、案外真面目だよな」
「うっせぇ」
眠くなんかない。居眠りなんてしたくない。だって残り一回だぞ? そしたら、お前は帰っちまうじゃねぇか。大学戻っちまうだろ。追っかければいいけど、でも、まだ一月で、必死こいて勉強して、そんで、入れたとしたって四月だろ? その間、ほぼ丸ごと三ヶ月もあんだぞ。
その三ヶ月がやたらともどかしい。
そして、すげぇ、邪魔で仕方ない。
昨日は元旦で、親戚が集まってワイワイガヤガヤ、元ヤンキーの酔っ払いが騒ぐ中でずっと考えた。酒も飲めない未成年の俺は酒も飲める和臣が大学でどんなふうなんだろうって。
そして考えれば考えるほど、俺の知らない和臣がそこにいるように感じられて、モヤってした。そんな俺に親戚のおじちゃんは今日はえらく不機嫌そうだなって言って、また酒をグビッと飲む。
だって、つまんなかったんだ。
和臣に会いたいのに、元旦はそれができないから、つまんなくて仕方なかった。
「そういや、最近、新作アップしてないな」
「……手芸? 受験に集中しないとだろ?」
酔っ払いに絡まれるのもいつもなら楽しいのに、今年はテンションが下がる一方だから、部屋に戻って手芸でもして気分転換しようかと思ったよ。いつもなら、縫い仕事とかに没頭できるのに、昨日は手が止まりがちだった。集中できなくて、何度か指に針を刺したくらい。
痛くて、チクチクして、テンションは更に下がるばっかだったから、やめておいた。こんなのめったにないことなのに。何があったって、どんな時だって手芸だけはやたらと楽しくて仕方なかったのに。
「まぁ、そうだけど。昨日は元旦でレッスンなかったし、息抜きに何かアップするかなって思った。けど、なんも上げないから、ちょっと心配だった」
心配してくれんの? 俺のツイッターのページ見てくれてた?
「すげぇじゃん。剣斗、全問正解。これもあってる。一番ひねくれた出し方したのにな」
「そんくらいわかるっつうの」
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