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和臣特製の小テストで満点取れた。ただそれだけのことで声が弾んだ。
和臣が素直すぎんだろ。ちっともひねくれてねぇじゃん。すげぇ簡単だった。だから、全問解けた。
問題は解けるのに、ひとつどうしても解けない問いがあるんだ。
「やればできんじゃん。ほら、花マル付けてやったぞ」
俺の家庭教師なんだろ?
「すげぇすげぇ、これなら安心だな」
「……」
安心って、何が? 大学合格できそう? そしたら、和臣にまた会える?
「おし、そしたら、明日、もう一回テストな」
「テスト?」
「そ、本気でがっつり作るわ。過去問漁って」
なんで、こんなに会いたいんだろ。なんで、和臣のことばっか考えてるんだろ。和臣が作ってくれた小テストは答えが出せるのに、これだけわかんねぇ。
ダチみたいなのとも違うんだ。ダチ相手にこんなに会いたいって強く思わない。つまんねぇから、遊ぼうぜ、はあるけど、会えないからつまらないと思ったことはない。
ダチじゃない。やってることは勉強と休憩時間の他愛な会話くらいなもんなのに。カラオケもゲームも漫画も何もないのに、なんで、こんなに和臣に会いたいのか、その答えがわからない。
なぁ、家庭教師なんだろ?
なら、教えてくれよ。
「よし、そんじゃあ、また明日な」
「……あぁ、明日で終わり、だろ?」
「そうだな」
今度は胸がチクリと痛む。
明日で和臣とは会えなくなることに、つまらないとか、悲しいとかじゃなくて、切ないって思った。鞄を持って立ち上がる和臣を見ながら、なんか、引き止めたい衝動に駆られる。
相手はふたつ歳上の先輩ってだけだったのに。
「うわ、さみっ。っつうか、見送りとかいいよ。風邪引いたら冗談になんねぇから。早くうちに入りな」
「へーき、若いから」
ただの家庭教師なのに。
「あっそ。にしても寒いな。明日雪って言ってたけど、本当に雪降りそうだな」
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