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今朝は朝から雪だった。ふわふわした大きな雪の粒がゆっくり音もなく降ってきて、シュガーパウダーみたいに至る所を白くしていく。
今朝はこの雪にすげぇムカついてた。雪のせいで、あいつが、和臣が来れなくなったら、来るのやめちまったらどうすんだよ。今日がラストなのにって、腹立ったけど。
今は、頼むからもう少し降ってくんねぇかなって、思ってる。もっとたくさん降って、シュガーパウダーなんてもんじゃなくて、分厚く降り積もった雪のせいで、和臣がうちに泊まるとかしてくれたら、めちゃくちゃ最高なのにと願ってる。
勝手なもんだ。けど、だって、授業が。
「……和臣、問題、できた」
もう、あと少しで終わっちまう。
「お、じゃあ、答え合わせするか」
「……」
和臣手製の模擬試験。あんたが素直なのか、俺が賢くなったのか、一つもつっかえることなく解けた。
「すげぇ……ここまで全部、合ってんじゃん」
赤丸をつけながら、誇らしげに笑ってくれた。そりゃ、ちゃんと勉強したからな。和臣に見てもらってんだ、予習復習欠かさなかった。
「これさ……全問正解できたらご褒美あげよっか」
「え……ご、褒美?」
くれんのか?
「そ、なんでもいいよ」
なんでも? その言葉に、思わず唾を飲み込んだ。
「お前が欲しいも……ぁ、高いのは無理だから。現実的に考えろよ? 大学生の俺ができる範囲だかんな。寿司食いたいのなら、まわるとこ。服は大通りと市役所通りの交差点にある、あそこな」
それ、量販店のすげぇ安い服屋じゃんか。欲しいもの……えっと、和臣からもらいたい、欲しいものは。
「ぉ……すげぇ、マジで全問正解」
欲しいものは。
「何がいい?」
赤ペンをテーブルに置いて、ホッとしたって感じの溜め息をひとつ、和臣が落っことした。
俺の、欲しいものは――。
「いいよ、なんでも」
欲しいものは。
「……これ」
欲しいものは、和臣の。
「……ぇ?」
びっくりしてた。なんのリクエストをされるんだろうと肘をテーブルについて答えを待っている和臣の腕を、俺が、掴んだから。
「これ、がいい」
欲しいのは、和臣の手。
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