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指が、髪の質感を確かめるようにもっとしっかり中に入り込んで来て、これ、ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
ヤバイ。なんか、反応しそう。
「っ」
っていうか、もう――。
「剣斗」
「っ、ン!」
耳朶を摘まれて、びっくりして飛び跳ねた。そしてその拍子に顔を上げちまった。
「!」
目が、合った。
「っ」
耳、触るな。そこ触られると、もう、ヤバイんだって。なんでかとか、どうしてとか、考える暇もない。ただ戸惑うばかりの頭と、素直に指に反応する身体。熱くて、苦しくて、腹の底んとこがジクジクする。
「あ、っ……の」
疼いて、そんで、気が付いたら、その手を掴んでた。
「……剣斗」
「っ」
俺、何してんの? なんで、手掴んでんの? なんでご褒美が寿司でも服でもなくて、頭? つか、この手?
なんで、触って欲しかった?
「あ、かずっ……おみ」
そんなの、並べたらすぐにわかる。公式もなんもいらない。会いたい、話したい、触りたい、触って欲しい、笑って欲しい、それをひとつずつ足して、足して、そしたら、イコールで、答えが出てくるだろ。全部の俺が欲しいものは、ひとつの答えに繋がる。その答えは。
「あ……俺っ」
その答えは。
「安上がりでラッキー」
たったの二文字。
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