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「入れた」
大学に。
そんで、お前に「好き」って言いにきた。
親の仕事を継ぐためにここを選んだけど、ぶっちゃけちまえば、ここで勉強しないと仕事継げないわけじゃない。でもここがよかった。どうしてもここに受かりたかった。だから必死こいて勉強した。
「和臣のおかげだ。ありがと」
合格したのは告白するためだ。
「そんじゃ」
けど、俺は俯いて、その場を後にした。
本当は、会えたら、少しだけ時間もらってあの雪の日に言えなかったことを言いたかったんだ。それと、ありがとうって。和臣に勉強教わって入れた。そっちの親父さんからもう言伝されてるかもしんねぇけど、親父たちもすげぇありがたがってる。マジで感謝してる。
――ありがと。それと、好き、です。
そう言いたかったんだ。合格したってわかってからずっと言おうと思ってた。頭ん中で何度も何度も、繰り返し練習して、寝言でもその台詞を言いそうなくらい。
言えれば、それでよかったんだ。あの日、止められたから、そこでなんか色々止まっちまっててさ。同じ男の俺にそんなの言われても、和臣は迷惑かもしんねぇけど。いや、迷惑だろうけど、でも、言わないと俺も消化できないから。だから、とりあえず言わせて欲しかったんだ。
言えたら、それでよかったんだ。
その「好き」を言った後に何かもらえるなんて、ひとつも期待してなかった。本当だ。けど女連れ、とかさ……朝一で、そこまで心の準備はしてなかったから、瀕死の重症レベルの攻撃に、逃げた。
息もできないくらいに重い一発を腹に食らって、何かをもらえるとか期待なんてしてなかったけど、それでも。
「……クソッ」
それでも、もう少し、なんか、柔らかめでお願いしたかった。
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