10 おかめ

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 本当に、授業がギュウギュウ詰めなんだな。朝一で「和臣女連れ」っていう重いボディブローを食らった俺には入学式翌日からこの授業はけっこう堪える。  チャイムがなってようやく昼飯だけど、あとまだ午後もあるとか……疲れた。はぁ、とクソ重たい溜め息をひとつ吐いてから、学食に向かう足も、重たい。 「……」  いんのかな。学食行ったら、和臣の奴が女連れて食いに来てんのかな。っつうか、あれ、彼女? 化粧すごくね? ほっぺた真っ赤じゃね? あと、唇も真っ赤すぎじゃね? そんで肌白すぎじゃね? おかめかよ。  和臣の彼女、おかめ。  あれが。あのぬいぐるみくれた女? 似合わねー、裁縫とかすげぇできなさそう。っつうか、あれが手作りだとは思ってねぇけど。 「……?」  あれ? でも、あのおかめが彼女なら、なんであのおかめ女に直してもらわなかったんだ? あんな朝一からベタベタしてんだから、穴直してくれって頼んだらいいのに。 「おい、言い逃げ野郎」 「!」  頭にポンと置かれた手に飛び上がった。心臓が口から飛び出て、宇宙の彼方へ飛んでいくかと思った。 「ったく、いきなり現れて、不貞腐れた顔して、逃げるなよ」 「っか!」  和臣だ。 「お前が受かったのは知ってたよ。親父から聞いてる。すげぇ感謝されたぞって。すげぇ高そうなバームクーヘンもらったから、剣斗にお礼言っとけ、って」 「……ぇ」 「美味かったって。俺、一口も食ってねぇけどな」  和臣がいる。隣に。そんで、俺の、ワックスでがっつりセットした頭をポンポンって、した。 「ぁ……」  小さく声を上げると、俺を見て、苦笑いを一つ零した。イヤ、だったんじゃねぇのかよ。おかめ女に、キャラ違いすぎる後輩がいるって知られなくなかったんじゃなかったのかよ。
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