11 四月の残雪

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 言ってた。たしかに、そんなことを言ってたかもしれない。俺は、和臣に会えたことが嬉しくてたまらなくて、ずっと会えなかった間に降り積もった雪みたいな「好き」がすごくて、胸がいっぱいだった。あの記録的大雪になると天気予報で言われた、あの日の雪みたいに、あの日言わせてもらえなかった好きがどんどん降り積もって、こんもりとした山になったから、まだ溶けてない。もう四月だっつうのに、まだ溶けずに俺の中に残ってる。しかも、ここまで残った雪はガッチガチに硬くてさ。絶対に溶けてなんてやるもんかって、意固地なくらい。だから、言うから。 「そんで、なんだ、あいつ、まさか迷子? って、心配してたら、うちの棟にて、不意打ち食らって、びっくりした」  あの時はスルーされたっつうか、逃げられたけど。 「びっくりしてたら、お前が不貞腐れた」  好きだ、って、言うからな。 「……っぷ」 「なんだよ」 「お前、ホント、素直だな」 「何がだよ」  お前に彼女がいたって、それでも俺は言う。男なんて、しかもこんな可愛いとこなんてひとつもねぇ二つ下のヤンキーなんて御免だって思ってたって、言う。 「顔に書いてあるよ。ここ、学食だぞ」 「知るか」  頑固に居座ったんだ。四月になったって、まだこんなにでかい塊のまんま溶けて消える気配がない想いなんだ。  たくさん考えて、自分で自分のこと諭して、諭しまくって、否定しまくって。何度も何度も。熱湯かけて溶かそうとしたのに、それでも残り続けた気持ちが言いたがってる。 『好き』  ただ、その二文字だけを伝えたくて、まだここにいる。それに勝てる理屈なんて、俺には思いつかねぇよ。だから――。 「それだけ言わせてくれたらいいんだ。別にどうこうなりたいとか思ってねぇよ。けど、あの時言えなくて」 「剣斗」 「すげぇ未消化っつうか、だから、言ったらもうその後関わるつもりねぇし」 「わかったから」
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