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「何? 今の、先輩?」
「あぁ……地元が……一緒なんだ」
「……ふーん」
頭、いいこいいこ、すんなよ。嬉しくてにやけるだろ。
「なんだよ! 実習、まだかよ!」
昼間、話かけてくれた時、しんどそうじゃなかったから、もう復活したのかと思った。だから、今日の夜、会えたりしてって、調子に乗って喜んでたのに。
――悪い。今夜はレポートまとめたりがあるから。
また会えなくて、不貞腐れながらパッチワークでクッションカバーを作ってる。でも、ちっとも楽しくなれねぇ。
夕飯、肉じゃが食いたいんじゃねぇのかよ。汁びったびたになるんだから、作って持ってけってできねぇぞ。チャリのカゴになんて乗せて運べねぇかんな。
「……んだよ」
まだ、復活してなかった。
もううちの実家からもらった葉っぱ系の野菜はしおれるから食った。じゃがいもとかニンジンとかならあるから、まだ取って置いてるから、作れるのに。
「……おーい」
けど、和臣に夜会えずにいる。
「早く実習終われよ」
どんだけ厳しい実習なんだよ。そっちにも鈴木級のがいんのかよ。なぁ、実習はそれぞれの課題ごとで講師違うんだろ? その課題だっていつかは終わるんだろ? 彼氏と会う暇が五分くらいしか作れないほど厳しい大学なのか? それとも――。
「……和臣」
その彼氏と、あんま、会いたくないから、避けてる、のか?
「イテッ!」
思わず針を指に刺した。バカなことを考えた瞬間、パッチワークの縫い作業をしていた手元が狂った。小さくできた赤い粒みたいに、不安がぽこっと小さな粒になって出来上がりそうで、慌ててティッシュでそれを拭った。
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