2

1/4
前へ
/14ページ
次へ

2

「今日のご意見もほとんど『吉水くんがカッコイイ』っていうのだったよ」  後片付けを終えると、放送機器を操作していた牧野先輩が廊下の意見箱から何枚かの記入された用紙を持ってきた。あれは本当の僕ではないんです、嘉藤先輩の皮を被った僕なんですごめんなさいと、何度この用紙を見て思ったことだろう。  声の事を評価してくれるのは嬉しい。この『声』を出せるようになるまで随分努力したから。でも、僕のキャラクターがどうこうっていうのは僕の能力じゃない、台本を書いてる三人の先輩に言って欲しい。しかしあの先輩達は『吉水に何を喋らせたらウケるだろう』っていう次元で台本を書いている節がある。あれは一種のイヤガラセだよ。まぁセリフはともかく、他に勉強になる部分もあるから我慢しているけど。  先輩達が先に帰って、いつも僕が放送室の鍵を閉める。誰もいない放送室はとても静かだ。 「ふぅ」  何となく安心して溜め息をつくと、 「なに吉水、あたし達が帰った後いつもそうやってホッとしてるんじゃないでしょうね?」  帰ったと思っていた高田先輩が機材の陰に立っていた。僕は目茶苦茶驚いた。 「うわっ、なんですか先輩?! 帰らないんですかっ?」     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加