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これ以上の長居は気付かれて、イロイロ面倒臭い事になりそうだと思い、わたしはそっとその場を離れた。
しかし、おかしい…… ?
過去視とは、映し鏡に過去を再現するものの筈…… 。でも何も映らず、わたしは個室を出たのだ。
魔教本院の奥のホールで天井画や欄間の飾り、柱に彫られた彫像をぐるりと見回し観察した。どれもこれも見慣れた物だ。豪華さは無いが、所々に配置されたそれらは芸術性が高く、本院の造りはわたしの好みにも合っている。
だが…… 、此が過去視だとして、ここまで鮮明な物なのか? わたしは、もっと蜃気楼のようなものかと…… 。
わたしは不安に駆られ怯えた。
過去にタイム=スリップしたように感じたからだ。
「 君ー。」
ふいに声を掛けられ、
「 はい? 」
と、振り向くと、わたしより背の低いヴィオ=ラス様が、わたしの体の中に手を伸ばし、
「 あら? 」
と、前のめりに転びそうになっていた。
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