EP 2 過去視

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 「 本院の生徒である彼は、長老たるあなたの “ 顔 ” を知らなかったようね? 」  と。    その通りです。わたしは、ヴィオ=ラス様の名前しか知らなかった。お会いしたのはこの時一度きり。わたしの意識だけであなたに会った。  鏡の中のヴィオ=ラス様は、ゆっくりと首と肩だけでアルタナ長老を振り向き、  「 だから? 」  と、目を細めてクスリと笑う。  「 どうだと言うんです?  僕達は滅びに向かう者達ですよ? 」  ぞっとする様な邪悪で、達観した不敵な笑みだった。  その横で、幼いマリン=エル様が亀を床に置いて  「 バイバイ。」と、手を振っていた。あの亀は元の飼い主の処へと帰るのだろう。  春の陽気が満ちかけた北国のわたしの借家で遠い昔の記憶を漂う。  しかし、突然ゆらりと魔物の陽炎に、現実に戻された。明るかった居間が闇に閉ざされる。  それは、わたしが生まれた魔界の魔族の一人。彼は、ふっくらしたソファーに座るわたしの前に、臣下の礼を取り、片膝を床に付く。
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