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「‥‥どういうリアクションを期待してたの知らんけど、未練なんざないよ」
ヒロキはナツキから離れ、椅子に腰掛けた。
「ヨシミの旦那って、ユウイチだろ?アイツがどれだけヨシミの事を知っているか知らないが、少なくとも結婚まで行ったという事は、ボクの時みたいに『ドジ』を踏まなかったんだろうな」
「ドジ?」
ナツキ聞き返す。
「ああ。ナツキには言ってなかったけどな。ヨシミはある意味『二重人格』なんだよ。自分が『好き』だと判断した相手には男女を問わず『カワイイ私』を演出するんだが、これが一旦『コイツ、嫌い』になると突然『暗黒面』に反転するんだ」
当時の事を思い出したのか、ヒロキが首を横に振る。
「ボクが『それ』を知ったのはホンの偶然でさ。ある日、物陰で誰かが電話で喋っているのを聞いちまったんだ。スゲー低い声の荒っぽい口調でさ。『ああ゛?何いってんのよ?』的な。
『誰だろう?』と思ってみたら、それがヨシミだったんだ。いやぁ‥‥寒気がしたよ。普段ボクと喋っている時と比べたら1.5オクターブは低かったからね。『アレが素なのか!』と思ったら怖くなって」
「逆に言うとさ、アンタはヨシミの『それ』を知らなかったの?」
ナツキはヒロキに背を向けたままだ。
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