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外出
「なあ‥‥ナツキ、贅沢言って悪ィんだけど」
ヒロキがオズオズとナツキの顔色を伺う。
「何よ?『贅沢だ』って分かってんなら、黙ってりゃイイじゃん」
「‥‥いや、そうなんだけどさ。でもさホラ、『じっとして』ばかりいると息が詰まるんだよ。だから、夜中でいいから『外の空気』を吸いに行きたいんだ」
ナツキは素っ気なく玄関のドアを指差した。
「玄関を開けて、少し顔を出して、深呼吸して、それでドアを閉める。以上終わり。何か不満でも?」
「いや、だからさ‥‥」
『奥歯にモノが挟まった言い方』という表現がピッタリな感じで、ヒロキがナツキが食い下がる。
「デートだよ、デート。久しぶりにホラ‥‥ドライブデートとか楽しみたいんだよ。分かるだろ?」
「ふー‥‥ん?アンタ、それでイイわけ?知らないよ?『見つかって』も」
ナツキは呆れたようにヒロキに言い返した。
「うん‥‥まぁアレだよ、流石に昼間は人目もあるからコワいけど、真夜中ならどうにかイケると思うんだ。えー‥‥と。ホラ、昔、港の近くで夜中に星を見て楽しんだ事があるじゃん?今日は天気も良いし、星も良く見えるんじゃないかなっ‥‥て」
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