21人が本棚に入れています
本棚に追加
「‥‥何よ。『忙しい』ってのは、アンタの一方的な都合じゃん。自分が忙しいからって、ずっとアタシを放ったらかしにしてるクセに。こういう時だけ『恋人ヅラ』しようっての?」
不機嫌そうなナツキの横顔に、ヒロキは少々居心地が悪そうだった。
「まぁ、そう言うなよ。忙しくって構ってられなかったのは謝るからさ。これでもボクはナツキにずっと惚れてるんだよ?」
「まぁ!シラフでそんな事を言うなんて、そんなウソが通じるとでも思ってるの?」
ナツキの機嫌を取ろうとして、ヒロキは更に深みへ嵌っていくようだった。
「ウソだなんて‥‥、そんな事は無いよ。ホントに惚れているんだ。信じてよ」
ナツキは、チラッとヒロキの横顔を見て、すぐに前に向き直った。
「まったく‥‥お婆ちゃんが言ってた通りだわ」
「え?お婆ちゃん?お婆ちゃんが何を言ってたの?」
ヒロキが聞き返す。
「‥‥お婆ちゃんは言ってたわ。『男は"イイ女"に惚れるものだ。だが、男が言う"イイ女"って言うのは、自分にとって都合が"イイ女"の事だ』って。まったく、アンタを予言してたような言葉よね」
「いや‥‥手厳しいな‥‥はは‥‥」
ヒロキが苦笑いを浮かべる。
「けど、こうして匿って貰ってるのはホントに感謝してるんだよ?それに御飯も食べさせて貰ってるしさ。いつかチャンと恩返しはさせて貰うよ」
最初のコメントを投稿しよう!