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「ふん‥‥どうだかね。武士の情けで利子は勘弁してあげるから、期待しないで待っとくわ」
『目的地ニ到着シマシタ。停車シマス』
港への到着を知らせるジュリエットの電子音声が流れる。
キュイー‥‥ン
ハッチが開く音がして、二人は外へ出た。
「あー‥‥やっぱり‥‥外の空気はいい‥‥生き返る気分だよ‥‥」
ヒロキが大きく伸びをする。
岸壁は真っ暗で、遥か向こうに大型客船の明かりだけが見えている。
「‥‥寒いわね。まったく、こんな時間に何て物好きな話かしら」
ナツキはまだブツブツ言っている。
「そう言えばさ、さっきナツキは『男は都合のイイ女に惚れる』って言ってたよね?だったら、女はどうなの?『都合のイイ男に惚れる』んじゃないの?『友達に自慢できるイケメン』とか『大金持ち』とかさ」
ヒロキは、外の空気を吸って少し気分がリフレッシュしたようだ。
「違うわ」
ナツキがそれを否定する。
「『自慢出来るイケメン』とか『大金持ち』って言うのは理性的な『条件』なのよ。より確実に自分の子孫を残すため生物的な『条件』ね。そういうのは『理性』の話だから好き・嫌いの『感情』とは違うの」
「へえ‥‥?」
よく分からない、という顔をヒロキが見せる。
「‥‥女はね、『自分を破滅させてくれる男』に惚れるのよ。きっと」
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