覚悟

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「まぁいいわ。とりあえず『奇跡的に脱出できた』としましょうか?でもアンタはアタシにウソをついたよね?アンタ『漁船に助けてもらった』って言ってたでしょ?」 「あ、ああ‥‥そうだよ。あの辺は昔から良い漁場だから漁が盛んなんだよ」 「‥‥あまり、アタシを馬鹿にしないでくれる?アタシね『そういう奇跡』が無いかって考えて、あの日は海上保安庁のサイトにアクセスして付近を航行している漁船の航跡を追ってたの。でも、墜落事故のせいで付近は操業禁止措置になってて一隻の漁船も出てなかったわ。‥‥で、誰に助けてもらったワケ?問い合わせれば直ぐに分かるわよ?」 「‥‥。」 ヒロキからの、返答は無かった。 「アンタさ、どうやって旅客機を落としたか知らないけど『生きてるのが見つかるとヤバい』ってそういう話でしょ?生存確率0%の機体から生き残ったって聞いたら、誰が聞いたって『怪しい』に決まってんだし。だからアタシを『隠れ蓑』にしたんでしょ?まったく‥‥『都合がイイ』ったら、ありゃしないわ」 二人の間を吹き抜ける、港の風が冷たい。 「‥‥。」 ヒロキからの答えは、やはり返ってこなかった。 「でも『それ』も、もう限界みたいね?その余裕の無い様子だと。最初から計画してたんじゃないの?『時期が来たらアタシを自殺に見せかけて殺して逃げる』って。‥‥アシが付かないようにさ」     
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