覚悟

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バダバタと風に煽られてヒロキのコートが揺れている。 「‥‥此処はアタシが『自殺する』には良い選択よね。『思い出の場所』だからさ。『恋人の死に悲観して、思い出の場所で自殺する』って、『不自然』じゃないし‥‥アタシね、アンタがアメリカで『何をしていたのか』って想像がついてるわ」 コツ‥‥コツ‥‥と暗闇に靴音を立てながら、ナツキが岸壁の端まで近寄っていく。 「要するに今の『アンタの身体』って高度な『サイボーグ』なんでしょ?‥‥アンタの言う『リクエスト・システムの可能性』とやらを使った、さ」 ヒロキは先程から動きを止めたままだ。 「442便を墜落させて脱出するためなのか、それとも何か別に意図があったのか知らないけど‥‥アンタはアメリカでサイボーグ手術を受けて来たんじゃないの?だとすれば『生き残った』のは必然であって、奇跡とかじぁないわ」 海は波が荒れている。岸壁のコンクリートにぶつかって、ザブ‥‥サブ‥‥と不気味な波音を立てていた。 「正直に言うと、最初はね『もしかしたら、アレはヒロキの格好だけしたロボットなのかも』とも思ったんだけどさ。だから『ヨシミの話』をして反応を見たの。それで『ああ、これはロボットの反応じゃないな‥』って。そう思ったのよ」     
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