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それにしても、と室長は疑問に思っていた。
リクエスト・ペーパーで管制されている航空機が『事故』というのは、とても信じられるものではない。もしも万が一機体に異常劣化やトラブルがありでもすれば、そうした情報はリアルタイムで航空会社と管制塔に送信される仕組みだ。
そうした異常について何も履歴が残っていないというのは‥‥
『テロ』という言葉が、室長の脳裏に浮かぶ。
「まさかな‥‥」
だが、その可能性とて俄には信じられない。そうした『対策』についても、空港は万全の体制を敷いている。爆発物は疎か、刃物1本とて機内に持ち込める要素は無いハズなのだ。
「海上保安庁から連絡が来ました!室長、お願いします」
管制官からの声に、室長は我に返った。
「お、おう、繋いでくれ」
「‥‥海上保安庁です。管制室長さんですな?今、我々の船を現場に向かわせていますが‥‥」
相手の声にキレがない。何かを言いたいそうな風である。
「‥‥どうしました?その海域に何か?」
「ええ。実はG-A-12区域は、水深が深いのです。丁度そこだけが『裂け目』のような海底渓谷になってましてね・・・もしかすると捜索は難航するかも知れません」
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