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岬ヶ丘の外海には確かに『深海』になる部分がある。その『斜面』に多くの魚がついていて、格好の漁場になっているのだ。
「最深部だと、どれくらいでしょうか?」
室長が尋ねる。
「‥‥650から、700mほどはあります。その場合、我々のソナーでは捉える事すら困難です。海上自衛隊保有の『おおしお級』潜水艦か、JAMSTECの特殊深海艇であれば接近することも出来ると思いますが‥‥」
『悪い情報ほど、最優先に伝える』
これは組織のコミニュケーションとして常識であると言えよう。組織は常に最悪のリスクを想定して、それに備える必要があるからだ。
しかし、それでも室長としては『墜落前提』で話が進むのは、ある意味で『尚早ではないのか』という気がしないでもなかった。
「‥‥そうですか‥‥とりあえず、現場海域の海の状況だけでも確認をお願いします」
「了解しました。何かありましたら、早々に連絡致します」
海上保安庁からの連絡が切れる。
「・・・おい、運輸省の監査局に連絡をとってくれ」
室長が管制官に指示を出す。
「監査局ですか?」
管制官が聞き返した。
「監査局って、リクエスト・システムを主管する官庁ですよね?では、リクエスト・システムに何か不具合の可能性とか‥‥ですか?テロとかなら兎も角、システム・エラーは考えにくいですけど‥‥」
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