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真也と雅也はついに入り口までやって来た。入場整理をしている男に促されて中へと入る。料金は無料。タオルも貸し出してくれた。
「うわぁ!大きい!」
雅也はブルーの大きな2つの浴槽を見て歓声を挙げた。
「これは、凄いな」
真也も驚きを隠せない。中を見渡すとすでに先客は30人近くおり、湯船に浸かる者もいれば、溜まりに溜まった体の汚れを洗い場で懸命に落とす者もいる。
真也と雅也は並んで洗い場に座り、備え付けのシャンプーで頭を洗い始める。なかなか髪の毛が泡立たないのに四苦八苦しながらも指の腹で髪の毛にシャンプーをなじませ、2回洗い流す。自分の髪の毛を触ってみて、だいぶ髪の毛の脂分が洗い流されたのを真也は感じ取った。
「お父さん。じっとしてて」
雅也はそう言うと、真也の背中に立った。そしてタオルでゴシゴシと真也の大きな背中をこする。
「雅也、前より力が強くなったんじゃないか?」
真也が思わずそう言うと、
「えへへ」
雅也はそうやって笑った。
雅也が真也の背中にお湯をかけて石鹸を洗い流すと、
「今度はお父さんが洗ってあげよう」
そう言って真也が雅也の背中に立った。
「ありがとう。お父さん」
雅也は真也に背中を向けながらそう言った。
「なぁ、雅也」
真也は雅也の背中をこすりながら声をかける。
「何?」
雅也は腕を洗いながらそう訊き返す。
「ありがとう、っていう言葉って、元々はどういう意味だったか知ってるか?」
真也の問いかけに雅也は首を横にかしげた。その後ろ姿を見ながら真也は話を続ける。
「もともとは『有り難い』、有るのが難しいっていう意味の言葉だったんだ。滅多にないっていう意味だったんだよ」
「へぇ。そうなんだ」
雅也は背中から聞こえる真也の声にそう相槌を打った。
「そういう意味では、『有るのが普通』っていう意味の『あたりまえ』っていう言葉は、ある意味『ありがとう』という言葉の反対の意味なのかも知れないね」
「たしかに、そうかもね」
雅也がそう言うと、真也は雅也の背中にお湯をかけて、泡を洗い流した。
「さぁ、入ろう」
「うん」
2人はそう言うとブルーの浴槽に入っていった。
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