時の川の中で

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時の川の中で

「今日は特別な日だ」  茶臼山に陣取り、赤備えに六文銭の旗を掲げた部隊を率いた武将は呟いた。  一六一五年五月七日、真田幸村は徳川の大軍に幾度もの突撃を繰り返した。家康本陣の旗本は散り散りととなり、馬印が倒されたのは三方原の戦い以来だという。  しかしながら、反撃を受けた真田軍はあと一歩まで追い詰めながらも撤退を余儀なくされ、幸村自身も安居神社にて討ち取られた。  この日、大阪城は落城する。 ◇  六四五年七月一〇日、 「今日は特別な日だな」  中大兄皇子は話しかけ、中臣鎌足は頷いた。  聖徳太子の死去により、蘇我氏の専横は甚だしくなっていた。これを鎌足は憎み、クーデターを画策する。  三国の調の儀式の際、中大兄皇子は長槍を、鎌足は弓を持って隠れていた。  次の瞬間、二人は蘇我入鹿の前に躍り出た。入鹿が逃げる隙を与えず、これを討つ。  大化の改新が断行されることとなる。  二位尼こと平時子は嘆いた。 「今日は特別な日になるわね」  一一八五年四月二五日のことである。  源義経に追われた平氏は、三種の神器を奉じながら安徳天皇と共に彦島に追い込まれた。  平氏、源氏共に数百艘をもって関門海峡の壇ノ浦で激突する。     
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