第2章 ハプニング

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そういえば、店の電気を付けっぱなしにしていた。 俺は階段を降りて1階の店へ向かう。 2階は窓が少なく壁も厚めに作られているから雨の音はあまり聞こえなかったが、窓が多い1階に降りると叩きつける雨の音が凄まじく、他の音など一切聴こえない程うるさかった。 「こりゃやばいな……」 ふと外を見ると、雨に叩きつけられている彼女のバイクが目に入った。 ーーこのまま雨に打たれ続けてるのは、やばいんじゃないか? バイクには詳しくないが、ずっと雨に打たれているのは少なくとも良くないだろう。 ブルーシートを持ってきて被せる? ……と思ったが、ブルーシートなんて便利なものはここには無い。 「店の中に入れるしかないか……?」 入口の真ん前に停まってるし、そのまま真っ直ぐ店内に引っ張ってくるのが1番いい方法だろう。 床は汚れるけど、仕方ない。 そう判断し、僕は彼女のバイクを店内に入れることにした。 幸い、ハンドルロックはかけていないようだ。 「重っ……よいしょ……っと」 倒れないように腰にバイクの横側を当てながら押す。 段差が無いから、わりとスムーズに店内に入れることが出来た。 「タオルか何かで拭いた方がいいな」 バイクは洗車した直後みたいになっていた。 俺は掃除用具入れから新品の雑巾を取り出して、前のとんがったカウルから優しく拭き始める。 「 それにしてもでっかいなぁ」 ハンドル周り、サイド……と拭いていきながら、俺はぼそりと呟いた。
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