第2章 ハプニング

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音のする方をみてそれが何か分かると、俺は慌ててバイクを降りた。 どうやら、シャワーを浴び終えた彼女が下に降りてきていたらしく、階段の一番下でこちらを見て驚いたような顔をしていた。 ーー怒ってる。 そう思った俺は、急いで謝った。 「すす、すみません!ちょっと乗ってみたかっただけで……勝手に乗ってすみません!」 彼女はいつもの無表情に戻り、床に落としたらしい鍵を拾って、こちらに近付いてくる。 その威圧感がすごく、俺は少し怯えた。 だが、返ってきた言葉は思っていたものではなかった。 「床、泥だらけですけど」 「えっ?ああ……」 バイクを押してきた形跡で、泥でタイヤ痕が描かれていた。 俺は苦笑しながら答える。 「掃除すればいいので」 「そう……ですか。すみません。バイク中に入れてもらっちゃって」 「いいんですよ。この雨の中じゃ、俺でも外に置いてるの嫌だなと思いますから」 「ありがとうございます」 彼女はバイクに近付くと、持っていた鍵を鍵穴に差してハンドルを左に切ると、差していた鍵を回して抜いた。 それでハンドルは固定され、盗難防止ということだ。 「どうですか?"クナイ"の乗り心地」 「"クナイ"?」 何のことだろう、と聞き返したが、それが何を指しているのかはバイクのボディを見てすぐ分かった。 俺から見て真正面のバイクのボディに"XUNAI750"と金色の文字があった。 "XUNAI"と書いて"クナイ"と読むみたいだ。 俺はそれを理解すると、彼女の問いに答えた。
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