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音のする方をみてそれが何か分かると、俺は慌ててバイクを降りた。
どうやら、シャワーを浴び終えた彼女が下に降りてきていたらしく、階段の一番下でこちらを見て驚いたような顔をしていた。
ーー怒ってる。
そう思った俺は、急いで謝った。
「すす、すみません!ちょっと乗ってみたかっただけで……勝手に乗ってすみません!」
彼女はいつもの無表情に戻り、床に落としたらしい鍵を拾って、こちらに近付いてくる。
その威圧感がすごく、俺は少し怯えた。
だが、返ってきた言葉は思っていたものではなかった。
「床、泥だらけですけど」
「えっ?ああ……」
バイクを押してきた形跡で、泥でタイヤ痕が描かれていた。
俺は苦笑しながら答える。
「掃除すればいいので」
「そう……ですか。すみません。バイク中に入れてもらっちゃって」
「いいんですよ。この雨の中じゃ、俺でも外に置いてるの嫌だなと思いますから」
「ありがとうございます」
彼女はバイクに近付くと、持っていた鍵を鍵穴に差してハンドルを左に切ると、差していた鍵を回して抜いた。
それでハンドルは固定され、盗難防止ということだ。
「どうですか?"クナイ"の乗り心地」
「"クナイ"?」
何のことだろう、と聞き返したが、それが何を指しているのかはバイクのボディを見てすぐ分かった。
俺から見て真正面のバイクのボディに"XUNAI750"と金色の文字があった。
"XUNAI"と書いて"クナイ"と読むみたいだ。
俺はそれを理解すると、彼女の問いに答えた。
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