第3章 興味

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――カランカラン。 ドアベルが鳴った。 お客さんが来たと思い振り向くと、お馴染みの黒いレーシングジャケットを着た彼女――千紘さんだった。 「いらっしゃいませ。珍しいですね、こんな時間に」 あの大雨の一件以降、千紘さんは今までと変わらず平日の14時~15時頃に来てくれていた。 しかし店が忙しくなったのもあってゆっくり会話をする機会はあまり無く、ただケーキセットを注文されて提供する……ただのお客さんと店員という関係のままだ。 彼女が思っていたより優しくて、可愛く笑う子だと分かってからは、もっと彼女といろんな話をしたいと思っていたから、この時間に来てくれたのが素直に嬉しい。 千紘さんは俺の右隣の席に座ると、口を開いた。 「最近忙しそうだったから……この時間だったら誰もいないかなと思って。遅くなったけど、この前のお礼です」 彼女はテーブルの上に、パステルピンクの可愛らしい長方形の箱を置いた。 箱をよく見ると、 【Mitsuru Kasamatsu】の文字が書かれていた。 ――2つ隣の市街にある、有名な洋菓子屋の名前だ。 以前テレビで特集されていたのを観たことがある。     
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