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二ノ宮、鍵を返せ
おれはアパートの前の道で、自分の部屋に灯った明かりを見上げながら言った。
「……二ノ宮、おれんちから出て行ってくれないか?」
二ノ宮がヘラヘラ笑いながら言った。
「あれれ。葉山、本気で怒ってるの?」
怒ってなんかいなかった。二ノ宮が、超のつく変人で天才なのは学生時代から骨身に沁みてわかっている。今さらひとんちに芸能人を連れてきておっぱいを出していたくらいでは、頭をひっぱたけば済ませられるくらいにはやつの奇行に慣れた。
おれが二ノ宮を追い出そうとしているのは、もっと別な理由からだ。
「おまえがいると、おれは自分の才能のなさを見せつけられて辛い」
おれは半分ウソで半分本当の気持ちを話した。
二ノ宮がそばにいるとおれは自分の凡才さを見せつけられて辛いのは本当だ。
でもそれで二ノ宮に出て行ってほしいわけじゃない。
二ノ宮のような天才が、おれのような凡才の家に居候し続けるのは才能の無駄遣いだ。
こいつにはおれが夢見て叶わなかった才能がある。
やつの才能に嫉妬したときもあったがそんなことはもう過去の話で、半年間の間、ずっと一緒に暮らしてきて気が付いた。
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