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常識的な対応をするなら、家主のおれに無許可でおっぱいを丸出しにしている彼女に服を着てもらい、速やかに帰ってもらうのがスジってものだろう。
だがおれは芸能人のおっぱいと向き合っている二ノ宮のほうへ大股で歩み寄り、思いっきり頭をひっぱたいた。
「いたっ。なんで僕を叩くの?」
「おれの部屋でなにしてるんだおまえは!?」
おれは二ノ宮の耳を引っ張って外へ出た。
おれと二ノ宮は2階の外階段を降りていき、アパートの敷地外にある歩道までやってきた。そばの電柱についた街灯が淡く照らす薄闇のなか、近所の民家やマンションから夕飯のにおいがする。芸大に通っていた頃からここに住んでるおれはこの時間の空気が好きだった。
おれは夕飯のにおいがする夜気を深く吸い込み、二ノ宮に言った。
「なんでおまえがあんな人気タレントと乳繰り合ってるんだ?」
「あ――……」
二ノ宮は間の抜けた声をあげながら、腕を組んで考える仕草をすると、たっぷり10秒ほど間を置いてやつは言った。
「暇だったから? ――いたっ!」
おれはもう一発げんこつをぶちかました。
「無職でひとの金でパチンコするおまえが暇なのはわかりきってる。おれが尋ねているのは芸能人がおれんちにいる経緯だ!」
二ノ宮はまた「あー……」としばらく考えてから言った。
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