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天才と凡才
二ノ宮が天才的な映像作家で、自分がクリエイティブな世界に憧れているだけの凡才だと気付かされたのは、芸大でやつと出会ったのがきっかけだった。
入学して一年目の夏、同じ映像科の生徒同士でグループを組んで、30分の短編映画を撮るという課題が出された。
おれは仲の良かった同期生とチームを組み自分が監督を務めたが、そのときの作品は思い出したくもない。当時はまっていたゴダール映画を「オマージュ」と呼んで丸パクリした俺は、教授から失笑され、メンバーから袋叩きされた。フランス映画というだけで無条件にかっこいいと思い込み、手持ちカメラで撮った手ブレのひどい映像を「味だ」と豪語した当時の自分を殺してやりたい。
二ノ宮は違った。
やつは誰とも組まず、脚本も演出も撮影もすべてひとりで用意し、役者は音大に通う男女を起用した。舞台はもちろんフランスなんかじゃなく日本だった。
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