まさかの採点

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 徐々に時間は過ぎていき出来上がった生徒から、教授の地獄の採点がはじまった。 「はい、君はC! 上半身はいい出来だけど、下半身のバランスが悪い!」 「んー……君もCだなあ。影のつけ方がいまいちだね」  ばっさりと切っていく教授に生徒達は、肩を落とし青い顔で席についていく。 「次は成田君ね。んー、惜しいね。時間がなくて、最後が雑になった感じがするね。君はB!」 「おお! Bですか! ありがとうございます!」 「はい、次は……」 「小林繭です。よろしくお願い致します!」 「お、いいじゃない。筋肉美が上手く表現されていて、バランスもいいね。うん、これはA!」  はじめてクラスからAが出たことにより、生徒達からは拍手がおこり一体感が生まれる。繭は上機嫌のまま最後の仕上げをしている楓の元へ行き、スケッチブックを覗いた瞬間その絵に驚き息が止まった。 「え…………」 「こまゆちゃん凄いなあ、おめでとう」 「あ、うん……ありが……とう。か……楓君、それ……完成?」 「うん。さて、持っていこうかな」 「えっ! そっ……それを?」 「ん?」 「あ、いや……なんでもないわ…………」  さすがにその絵は「問題作」だとも言えず、かといってこの場の状況を考えると見せないわけにもいかない。繭はただ何もないことを祈るだけだった。  親友の心も知らずふわふわとした気持ちのまま楓はスケッチブックを差し出すと、教授はその絵に目を細めたあと楓を見つめた。 「楓君……君は『誰を』描いたのかな?」 「え?……」 「これは樋口君かい?」  教授なりに気をつかったのだろう。他の生徒に聞こえないよう小声で話す姿に、繭は目を覆った。  ーーあー、何か言われてるー! 嫌な予感しかしない! あの絵って絶対、輝君だよね? どう考えても顔が、モデルの人じゃなかったもん。やっちまったー! 楓君が幸せぼけを晒したー! 「んー、全体のバランスはいいんだけどね……。でもC!」  その採点結果だけが教室に響き渡り、今までオールSだった楓にクラス中がどよめく。驚きすぎて何が起きたのかも分からないまま席に戻ると、繭や成田に肩を叩かれてやっと楓は幸せぼけから目が覚めスケッチブックの人物に顔を赤くした。
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