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サークルでも案の定、輝の様子はおかしいままで完全に前の無愛想フェイスに戻ってしまった。繭が雅姫に近寄り、この原因は楓と会えないからなのかと聞くと「その通り」と呑気に笑っている。
「あのね……楓君も、もう初日から酷いの……」
「輝に会えなくて?」
「あ、いや……輝君には悪いけど、もうコンテストモードに入っちゃって完全にひとりの世界というか……。今年はそうなるのが早くて、このままいったら何も食べず眠らずになるんじゃないかって心配で……」
「でも学校には来てるし、授業もちゃんと受けているんだよな?」
「受けてはいるけど、頭の中はコンテスト一色だと思う。まあ……楓君が少し授業を休んだりミスをしても問題ないというか、ああ見えても特待生だし」
「えっ! はじめて聞いたぞ」
「覚えていないわよね……。この学校にダントツトップで入ったの。それで新入生代表の挨拶があったじゃない? あれ、楓君よ」
入学式の日に名前を呼ばれ壊れたロボットのように歩き壇上に上がる階段で盛大に転び、場内が笑いの渦に包まれたその人物が楓だったと知り雅姫は思い出し教卓の上で笑い転げた。
「ぶはっ! あれ、楓ちんだったのかー! いや、まじで最高に面白かったよな!」
「楓君には悪いけど、面白かったわよね」
「でも、あのド天然な楓ちんが特待生って驚きだな」
「ちなみに一年生の時の成績はオールSよ」
「うえ……そこまで凄いとちょっと引くわー……」
美飾大学の成績は百点満点の点数を五段階で刻み、百点から九十点までをSとしてそのあとがA。そしてB、Cと続き最低ランクがDとなっている。他の美術大学の中でも美飾大学の絵画科は特に難関とされていて、ド天然ピュアボーイと言われ続けている楓はこの大学の試験をトップで合格して特待生となり、一年生の時も好成績を納めていたようだ。
「じゃあいま時期ちょっとくらい何かミスしても、大きく成績に響くこともなさそうだな」
「そうなんだけどね。でも実はもう夏休み前に、一回やっちゃってるのよ……」
きっと輝も知らないことで、これもちょっと面白い話だと繭が小声で楽しそうに話をはじめた。
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